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青空さんとの出会い
「あっ、思い出したぞ!」
男性が大きな声を上げた。
「あんた、和彦の長男の嫁だろう?シキという名前に聞き覚えがある。黙ってないで返事くらいしろ」
鬼のような形相で声を荒げ、僕に詰め寄ろうとしたけど、その前に両脇に控えていた男たちに取り押さえられた。
「俺は和彦に騙されて金を失ったんだ。借金まみれになったんだ。他にも被害者は大勢いるんだ。俺の金を返せ!」
爆発したように怒鳴り散らした。
「高橋さん、人違いじゃないですか。ここにいるのは菱沼組組長、卯月遥琉の身内ですよ」
「俺の目は節穴じゃない。離せ!俺の娘じゃなく、ソイツが体で払えばいいだろう。違うか社長さんよ。俺はむしろ被害者だ!」
男性は目尻を吊り上げて怒り出した。
「言いたいことはそれだけですか?」
蜂谷さんが不快げに顔をしかめた。
「お客様がお帰りだ。お前ら丁重にお送りしろ」
男たちは暴れる男性をズルズルと引きずっていった。
「あの、蜂谷さん……」
真実を知るのは恐い。でも、何も知らないのはもっと恐い。意を決し、恐る恐る声を掛けた。
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