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亀裂

翌日の夕方。 応接室はピリピリとした物々しい雰囲気に包まれていた。 「四季の淹れてくれるコーヒーは文句なしに旨いぞ」 青空さんに手伝ってもらいコーヒーをテーブルの上に並べた。結お姉さんにはミルク多めのココア。 子どもたちは全員柚原さんが上に連れていってくれた。一太くんと奏音くんと遥香ちゃんがいてくれるから心配無用だ。 「櫂、お前は一体何者なんだ?」 沈黙を破ったのは卯月さんだった。 「何者と聞かれても困ります。私は樋口櫂です」 「本物か偽者かーーこの際だから白黒はっきり付けないか?」 「そう言われても困りますね」 櫂さんが不適な笑みを浮かべた。 「櫂は結が血の繋がった実の妹とは知らずに、結と結婚し紬が産まれた。櫂に真実を伝え、この世から消えてしまいたい、いなくなりたいと考えるように仕向けた。違うか?」 櫂さんの口角が微かに上がったような気がした。

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