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亀裂
櫂さんが動くより先に青空さんが動いた。
「そこら中に禁煙厳守、火気厳禁と貼ってあるのが見えないのか?」
「煙草も吸わせてもらえないのか?」
「吸いたきゃ外で吸え」
櫂さんにナイフを突き付けた。厳重な警備態勢が敷かれていることに気付かない櫂さんじゃない。
「袋の鼠とはまさにこの事かーーなかなか見付けてくれないからこっちからわざわざ出向いてやったのに、ずいぶんとまぁぞんざいな扱いをするものだな」
櫂さんが余裕の笑みを浮かべた。
「お前が顔のない男か?」
「さぁーどうかな?」
櫂さんが長い足を組みふんずり返ると、僕と結お姉さんをちらっと見た。
背筋が凍り付くくらいの恐怖を感じた。
「四季と姉さんには指一本触れさせない」
彼が僕たちを守るため前に出た。
「お、旨い」
櫂さんが紙コップに淹れたコーヒーをゆっくりと口に運んだ。
「櫂の真似はなかなか難しい。こんなに上手くは出来ない。抗うつ薬入りのブラウニーはなかなかの美味だっただろう?人がせっかく大麻入りの焼き菓子を作ってわざわざ送ってやったのに、一口くらい食べてほしかったな」
挑発的な視線を卯月さんや青空さんに向けた。
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