97 / 431
櫂さんの哀しい過去
「何もこんなところでサイズを確認しなくてもいいのに、だろう?青空は人一倍警戒心が強いから普段は触らせてもらえない。好物のスイーツと飯を食っているときだけは不思議なものであまり警戒しないんだ」
「そうなんですね」
「青空と一緒にいると毎日が楽しい。日々いろんな発見があってなかなか面白いんだ。退屈しない」
蜂谷さんが青空さんの耳朶を指でそっと摘まんだ。
青空さんは蜂谷さんのされるがまま。気にする素振りを見せずチョコバナナパフェを夢中になって頬張っていた。
「餅みたいなこの感触がたまらなく好きなんだ。見れば分かるが青空は耳の形が縦に長く、三日月のような形をしている。こういう耳の形をしている人は、人との協調性を大切にするタイプみたいだ。温和かつ優しい性格の持ち主らしい。和真、きみも青空と同じ耳の形をしているな。一度でいいから耳を触らせてくれ」
「蜂谷さん、それだけはどうか勘弁してください」
彼が逃げるようにそそくさとドリンクバーに行ってしまった。
「蜂谷さん、決して悪気はないんです。和真さんは耳が固いから、触られると我慢できないくらい、その激痛が……」
「そうか。和真の弱点は耳か」
蜂谷さんが意味深な笑みを浮かべた。正直に言ったつもりが、余計な一言だったかも。
ごめんなさい、和真さん。
ともだちにシェアしよう!