98 / 431
櫂さんの哀しい過去
「そんなに警戒しなくてもいいのにな。和真もなかなか面白い」
「ハチ、いじめるとかわいそうだ」
「いじめてない。これもスキンシップだ」
「なるほど。スキンシップか。じゃあ、俺も和真と遊んで仲良くする」
「止せ。ヤスに焼きもちを妬かれるだけだ」
「ヤスは四季ラブだ。和真は目にない」
妙に噛み合わない二人の会話に、結お姉さんは何度も吹き出しそうになって、食事どころではなかった。
彼も生きた心地がしなかったと思う。オムライスを右手で食べながら、常に左手で耳をガードしていた。
「青空さん、パフェそれでよっつめだよね?」
「いや、5個目だ」
「え~~もうそんなに食べたの。四季くん、私たちも負けてらんないよ」
結お姉さんが取り皿にフルーツとアイスを取り分けてくれた。
「そんなに食べれないよ」
「何言ってるの。デザートは別腹でしょう」
アイスを一口分スプーンで掬い口にそっと運んだ。
「あ、美味しい。アイス久し振りに食べたかも知れない」
ささやかな幸福感を噛み締めた。
ともだちにシェアしよう!