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櫂さんの哀しい過去

結お姉さんと話しに夢中になっていて、腰の曲がったお婆ちゃんが押し車を押して僕たちのほうに真っ直ぐ向かって来ていることに全く気付かなかった。 「あれ、本物じゃないよね?」 「マネキンだよね?」 ひそひそと話す客たちの声に、結お姉さんと一緒に振り返ると、にたっと薄笑いを浮かべるお婆ちゃんと目が合った。 「儂の孫を知らんか?」 「いえ、知りませんが」 結お姉さんが僕を守るためすっと前に出ようとしたら、それよりも先に青空さんが前に出た。 「四季」 彼がすぐに駆け付けてくれた。 「姉さん、それは?」 「あ、何でもないの」 結お姉さんがブラジャーを慌てて背中に隠した。 「店に入ったときからどうも店員の様子が変だとは思ったんだ。もしかしたらシェドの信者たちかもしれない。応援を呼んだから安心しろ」 蜂谷さんは鋭い視線でお婆ちゃんと、その背後にいる男性たちを睨み付けた。 「櫂を取り戻すためなら連中は手段を選ばない。櫂は教団がひた隠しにしてきた秘密や、知らなくてもいいことを知ってしまったのかも知れない」 「案外、狙いは俺かもな。俺ももとは青蛇の殺し屋だった」 青空さんが拳を軽く握り構えた。

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