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櫂さんの哀しい過去
「○×△×○△!」
「△×○×△○!」
怒っているような口調で早口で捲し立てるような声が聞こえてきた。日本語じゃないから何を言っているのか全然分からなかった。通行人も異変にようやく気付き、ざわざわしはじめた。
「ここは中国とは違う。入国した時に最低限マナーを守れって飼い主に言われなかったか?傍若無人な振る舞いは控えろってな。よってたかって弱い者イジメして、そんなに楽しいか?」
あ、この声の主は……。
「あんたの孫はここにはいない。さっさと失せろ。さもなければサツを呼ぶぞ」
ドスのきいた卯月さんの低い声があたりに響き渡る。
「和真さん」
約束をしたから目を開けられないのがもどかしい。
「卯月さんや菱沼組のみんなが助けに来てくれた。数はこっちのほうが圧倒的に多いから心配するな」
不安な気持ちを一掃させるように優しく微笑むと頭をぽんぽんと撫でてくれた。
「櫂は罪を償いまっとうな人間になると誓ったんだ。結や四季を浚って、櫂に千里を殺すように仕向ける魂胆だろうが、そう問屋はおろさない。青空もお前らのところにはもう二度と戻らない」
卯月さんや菱沼組のみんなが、お婆ちゃんと男たちを蹴散らしてくれた、彼が教えてくれた。
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