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櫂さんの哀しい過去

橘さんの妹さんなぜ命を狙われなければならないのか、その理由を帰りの車中で蜂谷さんが教えてくれた。 「千里は実は男で、昇龍会の会長だ。かなりのシスコンで姐さんを実の妹のように溺愛している。年齢とスリーサイズは非公開だ。間違っても聞かない方がいい。半殺しにされる。千里にばしばし叩かれていたのが夫の笹原だ。笹原は母方の名字で本名は、卯月蒼生。オヤジの弟だ。ややこしくなるからそのあたりはあとでちゃんと説明する」 腰を抜かすくらい驚いた。 「和真さんも驚いたよね?」 「……」 彼はずっと黙り込んでいた。心ここにあらず。そんな感じでぼんやりと窓を見つめていた。 「まさか三十年もの間冷凍保存されていたなんて、信じらんないよね?」 一人だけ置き去りにされたお婆ちゃんの話しでは、女性は櫂さんのお母さんみたい。和彦さんは櫂さんのお母さんを心底愛していた。だから再生を願い、200万以上もの大金を払い首から上を冷凍保存した。 一度解凍した遺体は腐敗が一気に進むからと、警察が慌てて回収し、お婆ちゃんも事情聴取のために警察署に連れていかれた。

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