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櫂さんの哀しい過去

「姉さん、櫂さんのお母さんってことはその、つまり……」 繰り返し手で髪をかき上げる彼。手がぶるぶると震えていた。 「俺の本当の母親でもあるってことだよね?」 「まだそうだと決まった訳じゃないよ」 「姉さんも一緒だと思うけど、俺、母親というものが何だか分からないんだ。母親がいて欲しいと思ったときはそばにいなかったし、写真でしか見たことがないから何一つ母親の思い出がないんだ。それでも寂しくなかったのはお爺ちゃんとお婆ちゃんと姉さんがいてくれたから。今は四季や子どもたちもいてくれるから寂しいと思ったことは一度もない。まさかこんな形で母親と再会するなんて思ってもみなかったからどうしていいか分からない。俺はどうしたらいい?何を信じればいい?」 「和真さん」 彼の手にそっと両手を重ねた。 「卯月さんが女性のDNAの情報がデータベース化されているって話しをしていた。だから親子鑑定が出来るなら親子鑑定をすべきだよ。それで和真さんや櫂さんのお母さんだって証明されたら、ちゃんと供養してあげなきゃ」

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