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櫂さんの哀しい過去

お婆ちゃんの身元が判明したのは翌日のことだった。認知症を患っているお婆ちゃんは一週間前に家を出たまま行方不明になり家族から捜索願が出されていた。 「副社長、今日は休んでください」 「ただでさえ納期が遅れているんだ。そういう訳にはいかないよ」 彼が心配で若林さんが駆け付けてくれた。 「和真さん、顔色が悪いよ。本当に大丈夫なの?」 「みんな心配症なんだから。大丈夫だって。心春、ママと姉さんと円花を頼んだぞ」 「うん!」 笑顔で心春の頭を撫でると、若林さんと急いで仕事に向かった。無理して明るく振る舞っているのが痛いくらい分かるからそれが一番辛かった。 「四季くんも仕事でしょう?あれこれ心配してもなるようにしかならないよ。青空さんを待たせると悪いよ」 結お姉さんに言われて青空さんが迎えに来ていたことにようやく気付いた。 「類をみない特異な事件だから箝口令が敷かれたのにどこからどう漏れたんだか。暇な連中だな」 蜂谷さんが窓の外をちらっと見るとやれやれとため息をついた。

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