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慶悟先輩
それから数分後ーー。
窓越しに見上げると、厚く濃い灰色の雲が空一面を覆っていた。
「我ながら上出来だわ。青空さんって、お肌が綺麗だから化粧のりがすっごくいいのよ。羨ましい」
結お姉さんに手伝ってもらい青空さんがあっという間に僕に変装した。
「尊がちくちくすると嫌がるんだ。だからなるべく手入れをしている」
青空さんが外用の車椅子に腰を下ろした。
「思ったより狭いな。まるで子どもになったような気分だ。でも座り心地は悪くない。これはなんの棒だ?」
「ブレーキ棒です。ブレーキを掛けるときに自分のほうに引っ張ってください」
「なるほどな。理解した」
マスクを付けると、青空さんの表情が引き締まった。
「青空さん……」
結お姉さんが心配そうに青空さんを見つめた。
「姐さんの弾よけをしていたときに、何度か姐さんの代わりをしていた。危険は承知している。俺もオヤジやハチと同じで弱い者をいじめるヤツと、平気で嘘をつき人を騙すヤツが大嫌いなだけだ。四季の弾よけになったのも何かの縁だ。心配してくれてありがとう」
青空さんは結お姉さんの不安を一掃するかのように満面の笑みを浮かべた。
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