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慶悟先輩

「け、慶悟先輩。なんで」 たもくんが急に慌て出した。彼の混乱と困惑が伝わってくるようだった。 慶悟《けいご》さん……高橋慶悟さんは同じ施設で育った先輩だ。 高校卒業後、鳶職になるために土建会社に就職したみたいだけど、まさかヤクザに転身していたとは。たもくんもビックリしていた。 披露宴のあと、たもくんは卯月さんを迎えに来た慶悟さんと再会した。きよちゃんと別れたことを慶悟さんはすでに知っていて、たもくんを「ヨメ」呼ばわりし、しつこく追い掛け回している。 「弓削さん、たもは俺のです。気安く話し掛けないでいただけますか?」 じろりと睨み付けると弓削さんから服をがさっと乱暴に奪い取った。 「裸を見せるのは俺の前だけ。他の男に見せたら許さない。何度言ったら分かるんだ?たも、着せてやる」 「大丈夫です。自分で出来ます」 「遠慮するな」 慶悟さんは嫌がるたもくんに無理矢理服を着せてあげた。 「慶悟、弓削を睨むなど100年早い。新入りの癖に態度がデカイ。兄貴分たちに締め上げられても知らんぞ」 見るに見かねたヤスさんが声を掛けた。 「そんときは受けて立ちます」 慶悟さんは不遜な態度を全く変えなかった。

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