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慶悟先輩
ゆっくりとスプリングが沈み、布団が捲られ、彼が隣に入ってきた。
「まったく、どれだけ迷惑を掛けたら気が済むんだろうか」
不満も露わな表情で言うと深くため息をついた。
「和真さん?」
「和彦さんも喜代子さんも結局は自分が一番大事。保身のためなら他人を利用することも、傷付けても構わない、つくづく自分勝手な人たちだよ」
夜の静寂の中、彼の手にそっと指を絡めると、ぎゅっと握り返してくれた。
彼の香りがふっと鼻先を掠め、温もりが伝わってきた。
もうそうだけで心臓が飛び出しそうなほどドキドキしてきた。
「四季の手、すごく熱いね。もしかしてドキドキしてる?」
彼の言葉にギクッとした。
僕のことは何でもお見通しだ。
「気のせいじゃないかな。眠いから寝るね」
慌てて顔を逸らそうとしたけど、不意打ちのキスに阻まれた。
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