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真山さん
「俺のこそ前を見てなかったから、ぶつかって悪かったな」
「いえ、大丈夫です。あ、あの、ま、真山さん……」
「ん?」
じろりと見下ろされ、ぎくりとした。
「聡太くんは一緒じゃないのかなって」
「一緒に連れてきた。さっき車のなかで吐いた」
「真山、まさかそのままにしてきたのか?」
「だってしょうがねぇだろう。キヨもいないし、どうしていいか分からないんだから」
「しょうがねぇで済まされる話しじゃないだろう。吐いたものを喉に詰まらせたりしたらそれこそ大変だ。命に関わる。車はどこだ?」
「こっちだ」
「ハチ、柚原を叩き起こせ」
ヤスさんが真山さんの後ろを追い掛けていった。
ドアを開けたら、聡太くんを縦に抱っこした彼と鉢合わせになったからびっくりした。
「四季も心春もいないから菱沼金融にでも行ったのかと思って下に下りたら、真山さんの舎弟さんから坊っちゃんが吐いた、橘さんを呼んでくれって頼まれたんだ」
「ヤスと真山を急いで呼び戻さないと」
蜂谷さんがスマホを耳にあてた。
それから数分後ーー。
「聡太くんくらいの月齢の子の吐き戻しはよくあることです」
「そうなのか?」
「えぇ。普段どんな感じでげっぷをさせてますか?」
「それが背中を擦ってもげっぷしないんだよ。キヨと何が違うのかよく分からん」
橘さんと柚原さんが手取り足取り真山さんにミルクのあげ方とげっぷのやり方を教えてあげた。
「最初から出来る人はいませんよ」
「ありがとう橘、柚原。キヨがいなくなりどうしていいか分からなくて途方に暮れていたんだ。助かった」
聡太くんを抱っこし、真山さんが深く頭を下げた。
「フジヤは病院にそのまま入院になった。キヨと接触するかも知れないから、監視をするためにここに来た」
「聡太くんを危ない目に遭わせることだけは止めてくださいよ」
「分かっている」
聡太くんをあやしながら真山さんが大きく頷いた。
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