133 / 431

卯月さんは寝かしつけのプロ

偶然にも粉ミルクの缶は円花が普段飲んでいるものと同じものだった。 くんくんと交互に匂いを嗅ぐ卯月さんと橘さん。 「こっちと比べるとミルクの匂いが少し薄くねぇか?」 「ミルクの匂いよりチーズの匂いのほうが強いかも知れませんね」 卯月さんが真山さんが持ってきた粉ミルクの缶を後ろに控えていた若い衆に渡した。 「缶の蓋に【飲むな!危険!】とでも書いておけ」 「はい、分かりました」 同じものを駅ナカにあるドラッグストアから購入してくるように頼んだ。 「教団に関してよからぬ噂が飛び交っています。民間の鑑定機関に依頼して調べてもらいましょう」 「ミルクのあげかたや飲ませかたすらよく分かっていない真山を騙すなど赤子の手をひねるくらい容易いことだろうよ。一度ならず二度も聡太を置き去りにするなど許せない」 聡太くんがくずりながらごそごそと動きだした。 「さっき寝たばっかだろう。寝ないとでかくなれないぞ」 慣れた手付きで聡太くんをあやす卯月さん。ものの数分で寝かし付けてしまった。さすがだ。

ともだちにシェアしよう!