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二人の真山さん
「どうしたその頭……」
真山さんが戻ってきたのは夕方の五時過ぎだった。
「よし、げっぷが出たな。偉いぞ聡太」
卯月さんが聡太くんにミルクをあげ、縦に抱っこしてげっぷをさせていたときに帰ってきた。髪を丸めていたからみんなびっくりするのも無理がない。
「腹踊りでも下働きでもなんでもすると言ったはすだ。散々迷惑を掛けたんだ。キヨを捕まえ、卯月さんや四季に土下座し謝罪させるまでは帰ってくるなとオヤジと兄貴に怒鳴られた」
「お前も大変だな」
卯月さんが真山さんの肩をぽんぽんと軽く叩いた。
「卯月さんの身内に、一度ならずも二度も手を出すなど言語道断ーー宇賀神組の組長が烈火のごとく怒り出したんだ。自分とこの若いのが四季を人質に取り病院に立て籠ったんだ。そりゃあ、誰だって血の気が引いて真っ青になる」
ヤスさんがスマホの画面を見せてくれた。
ネットのニュースで人質になっていた十八歳の車椅子の妊婦が無事に救出されたと報道されていた。
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