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キヨちゃんは僕が知っているキヨちゃんじゃなくなっていた

彼の電話が鳴り出した。 「誰だ?」 「知らない番号からです。喜代子さんかも知れません」 「そうか。貸してくれ」 柚原さんに言われるがままスマホを渡した。 「真山は不遇な生い立ちに同情し結婚してくれただけ。聡太の父親になってくれただけで、本当は自分のことなんてこれっぽっちも愛していない。きみは真山の気持ちを測りかねて煩悶したんじゃないか?」 キヨちゃんはなにも答えなかった。 「夫婦なんてしょせん赤の他人だ。最初からうまくいきっこなんてないんだ。真山のところに戻れ。聡太もきみが帰ってくるのを待っている。今ならまだ間に合う」 柚原さんが聡太くんの声をキヨちゃんに聞かせてあげた。 ー言いたいことはそれだけ?聡太のためを思い楽に死なせてやろうと思ったのに……余計なことをしてー 「は?」 柚原さんの眉間にどんどん皺が寄っていった。 ーだってそうじゃない。聡太は人殺しの子どもなのよー 「腹を痛めて産んだ、かけがえのない大切なわが子だろう」 ーもっと早く妊娠に気付いていたら中絶していたわよ。泣いてばかりで五月蝿いし、うざいだけじゃん。あ、そうだ。四季に言っといて。どうぞ和真とお幸せにって。せいぜい家族ごっこを楽しんでねって。でも、私の方が四季より何倍も幸せだけどねー 嫌みたっぷりに言うと電話を一方的に切ってしまった。 「橋本といえまゆこといえ、我が子より大切なのは金と男と贅沢三昧な暮らしか……」 柚原さんがため息をついた。 「まゆこさんって?」 「奈梛の母親だ。目先の欲ばかりにかられて、邪魔になった旦那と娘たちの命すら容赦なく奪った希代の悪女だ。オヤジがいなかったら奈梛も殺されていた」 ヤスさんの説明にぞうっとし身をすくませた。

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