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発端

「僕のお父さんもそのなんとか宗教の信者だったのかな?」 「それは分からない。きみのお父さんとお母さんは副島の近所に引っ越してくるまでの数年間、熱海で果樹農園を経営していた親戚のもとに身を寄せて、農園の手伝いをしていたみたいだよ。弓削さんがその親戚のもとを訪ねて、当時の話しをいろいろと聞いてきたみたいだよ」 「弓削さんが僕に話しがあるって言ったのは……」 「そのことかも知れない」 ヤスさんの本当の名前は海堂《かいどう》多來未《たくみ》。 ヤスさんは、教祖が命名してくれたこの名前が大っ嫌いだった。 ヤスさんは弓削さんに呼びやすければなんでもいい。適当に名前を付けてくれと頼んだみたいで、それでヤスという名前をつけたもらったみたいだった。 「ハチ、俺、恐ろしいことに気付いたぞ」 「どうした?藪から棒に」 「李は自分の子どもさえ利用し、躊躇なく殺してきた。この男、李と同じ目をしている。同じ(けつ)(あな)の仲間なんじゃないか?」 「青空、それをいうなら同じ穴の狢だ」 「なるほどな。またひとつ勉強になったぞ」 青空さんの目がきらりと光った。

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