172 / 431

二人の顔を持つ殺し屋

「何?椎根だと」 蜂谷さんと弓削さんの声が見事にハモった。 「知り合いなんですか?」 「知り合いもなにもとんでもないヤクだ」 「和彦のヤツ、椎根から金を借りてないよな」 不安を口にした。 「亜優、ハッカーに攻撃され流出した椎根金融の顧客リストあったよな?削除したか?」 紗智さんが通訳すると、 「消してないって」 「顧客に朝宮和彦がいないか大至急調べてくれ」 「分かったって。任せてって」 紗智さんが亜優さんの代わりに返事をした。 「和彦は父親だが、親子の縁はすでに切ってある。それでも返済義務があるのか?」 「そもそも闇金自体が法律違反だ。返済義務はないが、和真のところに和彦が借りた金を返してくれない。困っているんですよ。そう連絡をするかも知れない」 「和真に相手にしないようにと連絡しないなとな」 弓削さんがスマホを耳にあてた。 「弓削さん、亜優がね、若林って、若林さんの親戚とかじゃないよね?そう聞いているんだけど?あれ?電話中だった。蜂谷さん、この人なんだけど」 紗智さんがパソコンの画面を指差した。 「これだって言われてもな。どれだ?」 「この人だよ」 蜂谷さんがしばらくの間画面を凝視していた。

ともだちにシェアしよう!