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僕のお兄ちゃん

「その子は海堂の孫じゃない。一宮夫婦の孫だ。それでいい」 「ヤスさん……」 突然目の前にヤスさんが現れたものだから腰を抜かすくらいびっくりした。ぜんぜん気配を感じなかった。いつからいたんだろう。 今月いっぱいはゆきうさぎ丸の店長を休んで経理の仕事をしている鳥飼さんの手伝いをしているヤスさん。急遽店長代理を任された青空さんと佐治さんのコンビで得意先を回っている。 「それに俺のめんこい姪っ子だ」 「ヤスさん、あの……」 「兄ちゃんって別に呼ばなくてもいい。今まで通りでいい」 「そんな訳にはいきません」 「きみに無理強いをしたくないんだ」 ドンドンと強くドアをノックする音が聞こえてきた。 「きらがいなくなったみたいだ。あれほど知らない人には付いていくなって注意したのに。六月までは海翔がいたからまだ良かったが、海翔がいなくなったら誰もみようとしない。ほったらかしだ。だからこうなる」 「海翔くんって?」 「瀧田の兄は海翔の母親と再婚したが、海翔を毛嫌いし、弟に世話を丸投げしたんだ。色々あって関東に住む祖父母に引き取られた。きらを連れ去ったのは菱沼組の構成員だ。匿名の電話が警察に寄せられたと渡辺から連絡があった。おそらくサツが来たんだろう」 ヤスさんがドアを睨み付けた。

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