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僕のお兄ちゃん
「ハロウィンは終わったはずだ。何かの祭りか?」
「どうしたいきなり。A神社の秋季大祭は十一月三日だぞ」
「 じゃあ、あれは何だ?」
青空さんが指差したほうを見る彼とヤスさん。ハンドリムをこいで窓に近付き下を見た。
舗道には白装束を着た集団が一心不乱になにかを唱えながら行進していた。夜九時過ぎ。駅も近いし、繁華街もすぐ目の前だから人通りも多い。異様なその光景に通行人はぎょっとして足を止め、なるべく目を合わせないようにそそくさと足早に素通りしていた。
千鳥足のスーツを着た男性が集団にぶつかった。無言で男性を睨み付けながらぐるりと取り囲んだ。
警備にあたっていた菱沼組の構成員が男性を助けに行こうとしたら、数人のお巡りさんが警笛を鳴らしながら走ってきた。
「触らぬ神に祟りなしだ」
「ヤスさん、彼らはもしかして………」
「そうだ。一時はなりをひそめていたが、最近活動を活発化させている。瀧田の倅を誘拐したのは菱沼組。根拠もない噂話だけが一人歩きしている。彼らはオヤジを逮捕しろと抗議デモをしているんだ。まったく、人様の迷惑も考えないで、はた迷惑な連中だ」
ヤスさんがやれやれとため息をついた。
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