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僕のお兄ちゃん
「隅から隅まで新聞を確認したけど、どこにもきらくんのことは書かれてはいなかった。テレビでも報じていない。まるで狐に包まれているようだ」
「報道規制が敷かれているとかは?」
「もしかしたらそうかも知れない」
「蜂谷さんとヤスさんがね……じゃなくてお兄ちゃんだ。そう呼ばなきゃならない。頭で分かっているんだけどなかなか難しい」
「急ぐことも焦ることもない、ヤスさんがそう言ってただろう?」
「うん」
「蜂谷さんとヤスさんがね。の続きは?」
「そうだった。話しが脱線してごめんなさい。瀧田さんの家に警察がガサ入れに入るのはこれで二度目だって話していた。一回目のときは、隣に建つ本家でボヤ騒ぎがあって混乱に乗じて瀧田さんが証拠となったかも知れない海翔くんの服とかすべて持ち出してしまい、なに一つ出てこなかった。警察とマトリの面目が丸潰しになったって。城さんと渡辺さんに何事もなければいいけど……なんかね、すごく嫌な予感がするの。一太くんが通う小学校のすぐ目の前だし、住宅密集地だし……でもまさか、瀧田さんが、前に住んでいたアパートの近所だったとは、こんな偶然もあるんだね」
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