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慶悟先輩、たもくんをお願いします
「顔が真っ青だ。大丈夫か?」
彼が心配そうに顔を覗き込んできた。
「キヨちゃんの視線がここに突き刺さるようですごく怖かった」
心臓のあたりをぎゅっと握り締めた。
僕が知ってるキヨちゃんとはまるっきり別人になっていてかなりショックを受けた。
「キヨの影も形もない。いつの間にか俺の知らないキヨになっている」
それはたもくんも一緒だった。
キヨちゃんと同棲し、結婚まで約束したのに。結局キヨちゃんに一方的に捨てられたたもくん。
経緯を知っているからこそ慶悟先輩も辛いはず。複雑な面持ちでたもくんに寄り添っていた。
「慶悟、岩水の亭主はお前だ。もっと自信を持て」
見るにみかねた卯月さんが慶悟先輩に声を掛けると、
「はい、オヤジ」大きな声で返事をし、
「保、俺の肩に掴まれ」
たもくんの体をゆっくりと起こすと、体を支えて車まで移動すると青空さんたちの力を借りて後部座席に乗せた。
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