230 / 431

チカさんのダーリン

「チカの夫の国井です。はじめまちぃ……たいくん、ちょっと待っ~~だよ」 太惺くんが国井さんの口の両端を手で掴むと左右にびょ~んと引っ張った。その顔を見た心望ちゃんがキャキャと声を立てて笑いだした。 「遊びに来るとね決まってチビッ子たちのおもちゃなのよ、ダーリンは」 「何をされても怒らないから二人はご主人のことが大好きなんですね。見てて分かります」 彼もクスクスと笑っていた。 「だからかな?年に数えるくらいしか会えないけど、チビッ子たちはダーリンの顔を忘れたことはないの。毎回熱烈大歓迎されるのよ」 チカさんも嬉しそうだった。 「たいくんにここちゃんここにいたか。おじちゃんは大事な話があるんだ。ぱぱたんっておいで」 柚原さんが二人を迎えに来てくれた。弓削さんも一緒だ。 「国井さん、キヨちゃんはどうなるんですか?」 「実は別件でも逮捕状が出ていて、怪我の回復を待って東京に移送されることになった。田辺広司………橋本の母親の内縁の夫の兄のことだ。まだ何か隠しているような気がするんだ。卯月にも話したが、橋本はまだ逮捕されていない。逃げようと思えばいくらでも逃げられる。くれぐれも用心するように」 国井さんがちらちらと太惺くんと心望ちゃんを見ていた。もっと遊んで!と言わんばかりに下唇を思いっきり伸ばし、ばんばんとテーブルを叩いていた。

ともだちにシェアしよう!