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消えた乗客の正体

槇島さんがすくっと立ち上がり、憮然とした表情でパソコンのモニターを覗き込んだ。 「そこにいるのは卯月か?ちょうどいい。いいことを教えてやろう。そこにいる海堂の娘は金になるぞ。俺に命を狙われているのにな、這いずり回ってほかの乗客に声を掛けているんだぞ。滑稽だったよ。でも予想より人が集まってくるのが早くてな。田舎だからと甘く見た。だから娘にとどめを刺す前にずらかるしかなかった。海堂と瀧田と八木田は、喉から手が出るくらい娘を欲しがっている。いまなら腹の子とセットで高値で売れるぞ」 ゲラゲラ声をあげて笑う槇島さん。 悔しくて涙が溢れた。 彼もヤスお兄ちゃんもコウお兄ちゃんも怒りに体を震わせていた。 「言いたいことはそれだけか?」 卯月さんが槇島さんをモニター越しに睨み返した。

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