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決別
買い物客がちらちらとその人を見ていた。なるべく目を合わせないように足早に通りすぎていた。
「お客様、すみませんが、他のお客様の迷惑になりますので場所を移動していただけませんか?」
店員に何度注意されても、耳が遠いのかその人は微動だにしなかった。壊れた傘に顎を乗せ、じっと遠くを眺めていた。
髪はボサボサ。着ている服もボロボロでお酒の匂いがぷんぷんとしていた。
ヤスお兄ちゃんにはその人が誰かすぐに分かったみたいだった。
「心春、違うアイス屋さんに行こう。最近オープンした、おすすめの店がある」
ヤスさんは男性に見向きもせず立ち去ろうとした。
「多來末……父さんを見捨てる気か?」
か細い声が聞こえてきた。
「俺の名前は渡会保徳。通称ヤスだ。菱沼組会長渡会と紫さんが俺の両親だ。人違いじゃないか」
「このろくでなし!育ててやった恩を仇で返す気か!」
傘が飛んできた。
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