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決別
「海堂、相変わらず芝居が下手くそだな。恥ずかしくねぇのか?」
「渡会さん、紫さん何で?」
ヤスお兄ちゃんが驚いたような声をあげた。
「陽葵ちゃんと円花ちゃん初節句でしょう。だからひな人形を見に来たのよ。可愛い孫のことになると渡会は人が変わるのよ」
おほほと上品に笑う紫さん。
「ケースに入っている男雛と女雛だけの雛飾りなら置場所に困らないだろうと思ってな」
渡会さんが海堂さんをじろりと睨み付けた。
「ヤスは俺と紫の大事な倅だ。ヤスはどっかの誰かさんと違い家族想いで、親を大事にしてくれる孝行息子だ」
「四季くんもね、私にたちにとっては大事な娘よ。海堂さんとか言ったかしら?」
紫さんは笑ってはいたものの目は笑ってはいなかった。
「ちょうど良かったわ。探す手間が省けて。これにさっさと署名捺印して」
二人に付き添っていた若い衆が封筒から白い紙を取り出すと海堂さんのまえにそれをどんと置いた。
「なんだこれは?」
「見て分からないかしら。誓約書よ。今度二度と保徳と四季くん。それに孫たちに近付かないという」
紫さんが海堂を睨み付けた。
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