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決別

普段は穏やかな紫さん。いつもにこにこと笑っていて、怒った姿を一度も見たことがない。未知さんと同じく舎弟たちを顎でこき使わず大事にしてくれるから、舎弟たちは未知さんと紫さんをお母さんのように慕っている。未知さんは女神様で、紫さんは菩薩様だと誰かが言っていた。 紫さんが怒る姿をはじめた見た。 「こんなの承服出来る訳ないだろう。ふざけているのか!」 海堂さんが誓約書をクチャクチャと両手で丸めると紫さんに投げつけた。 「俺の大事な息子を誘拐した罪で訴えてやる」 「保徳はね、公園で路上生活をしていた時に保護されたのよ。推定年齢十歳。氷点下の寒い朝に下着姿でトンネルの中で意識がない状態で弓削が見付けたの。保徳は記憶を失っていて自分が誰か分からなかった。だから、仮の戸籍を作り、当時の市長の名字をもらい原保徳と命名された。そのあと正式な手続きを取り、私たちの子どもとして迎えたの。違法性はないわ。私たちが貴方の大事な息子を誘拐したとそんなに疑うなら徹底的に調べら?でも調べられて困るのは私たちじゃなくて、海堂さん、貴方のほうじゃないかしら?」 紫さんが苛立った声でそう口にすると、海堂さんをじっと見据えた。

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