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決別

「 誰かに似ているんだよな。誰だっけな」 海堂さんがボソリと呟いた。 「菱沼組の前身は確か片山組だ。片山には娘がいた。もしかして……」 海堂さんが驚いたように紫さんを見た。 「私の父は貴方と若井の策略にまんまとはまり、やってもいない人殺しの濡れ衣を着せられ失意のなかで獄中死したわ。そのあと真犯人が逮捕され、父の無罪が証明されたけどね。しょせんヤクザは悪者。父がどんなに無実を訴えも渡会以外誰も耳を貸してはくれなかったわ。だからかしらね、四季くんがどうしても他人には思えなくてね。今回もそうよ。四季くんが父の仇である貴方と引き合わせてくれた」 紫さんが手にぶら下げていたバックに手をいれた。 「ま、待ってくれ。お、俺は何も知らない。全部若井がやったことだ」 「こころやすらぎの前教祖さまもずいぶんとまぁ落ちぶれたものよね。つい先日までシェドにお気に入りで日本支部長だったとはとうてい思えないわね」 紫さんが通行人に聞こえるようにわざと大きな声をあげると、 「こころやすらぎだと」 「日本支部長だと」 数人の通行人が足を止め、一人また一人と海堂さんのまわりに集まってきた。

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