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決別
「頼む。息子を帰してくれ」
「家内はあんたらに騙されて行方知らずだ。家内がどこにいるか教えてくれ」
「海堂さん頼む。金を返してくれ」
あっという間に人だかりが出来て、海堂さんを取り囲んだ。
「四季さん、心春ちゃん、アイスが溶けるので帰りましょうね」
紫さんがすたすたと歩き出した。
「四季、家に帰ろう」
ヤスお兄ちゃんは一度も後ろを振り返ることはなかった。
「この人でなし!」
海堂さんは何度も何度も、ヤスお兄ちゃんの名前を呼んで、恨み辛みを喚き散らしていた。
「渡会さん、紫さん、助けていただきありがとうございます」
別れ際ヤスお兄ちゃんが深々と頭を下げた。
「ヤス、頭をあげて。助けてもらっているのは私たちのほうよ。四季さんいつでも遊びにいらっしゃい。結さんもいるし、いつでも大歓迎よ」
アイスが入った保冷バックを青空さんに渡すと、にこやかな笑みを浮かべ渡会さんと車の後部座席に乗り込んでいった。
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