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決別
「ハチ、見てみ。アイスがたくさん入ってるぞ。俺の分あるかな?」
心配そうに保冷バックのなかを覗き込んだ。
「紫さんはちゃんと青空の分まで数えてくれているよ。心配するな」
「青空、三個余るから全部食べていいって言ってたぞ。その代わり、小さい子から選ばせてやってくれって」
「了解したぞ。余り物には福だ」
青空さんがニコニコの笑顔を浮かべた。
「和真と俺は似てる。家族より金と名声のほうが大事な父親。育児放棄され、和真は祖父母に育てられ、俺は弓削に拾われ、渡会さんと紫さんに育てられた。だから、似た者同士、気が合うのかもな。紘子さん、さぞや無念だっただろうな。我が子の成長を見ずに……」
ヤスお兄ちゃんが車窓にうつる景色を眺めながら、寂しそうにぽつりぽつりと呟いた。
ヤスお兄ちゃんのお母さんもすでにこの世にいないみたいだった。
「渡会さんと紫さんの老後の面倒は俺と弓削でみると決めているんだ。二人がいなかったら、俺も弓削も生きては来れなかった。俺は妹に会えず、弓削は姐さんに会えず、野垂れ死にしていた」
「こはるちゃんね、ヤスしゃんのおせわする」
「心春、ありがとう」
「げんきでた?」
「うん、出たよ」
ヤスお兄ちゃんがにっこりと微笑み、心春の頭を撫でてくれた。
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