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最後にありがとうと伝えたい
翌朝、菱沼金融に向かおうとエレベーターの前にいたら、
「和真、きみの母親の遺骨が安置されている場所が判明したぞ」
卯月さんに声を掛けられた。
冷凍保存されていた頭部のDNAを検査した果、彼のお母さん・千賀さんであると判明した。
「朝宮 紗矢 という名前で安置されていたから、どうりで見付からない訳だ」
「紗矢ですか?」
「その名前に心当たりがあるのか?」
「和彦さんには若くして亡くなった姉がいるんです。その名前が紗矢です」
「そうか、なるほどな」
「卯月さん、あの……」
「遺骨が別々な場所にあるより一つにまとめてちゃんと供養したほうがいい。冤罪を着せられ失意のなかで亡くなったきみの母親もこれでやっと浮かばれるだろうよ」
「卯月さん、母の遺骨が安置されている場所を探していただき本当にありがとうございます」
彼が深々と頭を下げると、
「和真、頭を上げろ。俺は四季の身内として当たり前のことをしたまでだ。だからいちいち気にするんな。その気持ちだけありがたく受け取っておくよ」
卯月さんが彼の肩を軽くぽんと叩いた。
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