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最後にありがとうと伝えたい

「和真さん、ちょっと待って。一回深呼吸をするから」 「浩太郎、俺も一回深呼吸をさせてくれ」 菱沼金融のドアを開けようとした彼とコウお兄ちゃんを思わず止めてしまった。 僕も昴さんもがちがちに緊張していた。 「もしかして四季さんに、昴さん?」 後ろから名前を呼ばれて、ドキッとして上体だけ捻り振り向くと彼と同い年くらいの男性が立っていた。小柄で細身で目がくりくりしていて、栗色の髪がさらさらしてとても綺麗な男性だった。 「初めまして鷲崎遥です。待ちきれなくて事務所に顔を出したら、菱沼金融に向かったって言われて。行き違いになったみたいだね。顔に何かついてる?」 思わず見惚れていたらくすくすと笑われてしまった。 「な、なにも付いてません」 慌てて首を横に振った。 「ヤスさんに耳にたこが出来るくらい四季さんの話を延々と聞かされていたんだよ」 「遥、ストップ。それ以上は勘弁してくれ」 ヤスお兄ちゃんが急にそわそわしはじめた。

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