285 / 431

直矢さんと遥さん

「悪かったな。似てなくて。母親が違うんだ。こればかりはどうしようもないだろう」 ゆきうさぎ丸と胸に書かれた緑色のエプロンを身に付けてヤスお兄ちゃんが菱沼金融に入ってきた。 「雪下キャベツだ。甘味があって旨いぞ」 遥さんと昴さんに一個ずつ大きめのレジ袋を手渡した。 「ありがとうございます」 「ヤスさんいつもありがとう」 「いいってことよ。白菜と葱も入っているから今夜は鍋にでもしたらいい」 「ヤスどうした?」 「用がなければ来て駄目か?」 「そんなことは一言も言ってないだろう」 「ハチ、いい知らせと悪い知らせがある。どっちを先に聞きたい?」 「どっちもどっちだな」 助けを求めるようにちらっと青空さんを見る蜂谷さん。 「いい知らせから教えてもらえるか?」 「分かった。春には尊が、夏にはタマが懲役から戻ってくる。公安の大山からの情報だから信憑性はある」 「そうか、良かった。青空喜べ。尊が帰ってくるぞ」 「そうか。尊が帰ってくるのか」 「どうした?嬉しくないのか?」 「嬉しいに決まっている。決まっているが……」 青空さんが言葉を濁し、急に歯切れが悪くなった。

ともだちにシェアしよう!