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ヤスお兄ちゃんおめでとう!

「いっしゃんこわい」 心春が一太くんにしがみつき目をうるうるさせて泣き出した。 「おぃ弓削!さっき言ったことをもう忘れたのか?俺のめんごい心春を泣かせるとはいい度胸だな」 卯月さんがぽきぽきと指の関節を鳴らした。 「オ、オヤジ、決してそういうつもりは……」 弓削さんの顔に見る間に冷や汗が浮かんだ。 「オヤジ、弓削の代わりに俺を怒ってくれ」 ヤスお兄ちゃんがすっと前に出た。 「ヤス、守るべき人と愛する人が出来て、ますますいい面をするようになった。男をあげたな。未知からの伝言だ」 ヤスさんにメモ紙を渡す卯月さん。 「姐さんからの伝言だと?初耳だ。ヤス、見せてくれないか?」 「駄目だ」 「何でだ」 「両想いになりさっそく痴話喧嘩か。いや、夫婦喧嘩か。相変わらずお前らは仲がいいな」 卯月さんがゲラゲラと笑い出した。 「オヤジ、冷やかさないでください」 「うだない」 ヤスさんも弓削さんもたじたじになっていた。

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