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本当の恐怖
「夜の病院って何か怖くないか?」
「そうか」
自動販売機で飲み物を買いに休憩スペースへと向かった彼とコオお兄ちゃん。
ナースステーションに明かりは灯っているが、しーんと静まり返って誰もいない。物音ひとつしない。まるで水のそこにいるようだ
水を浴びせられたような恐怖に襲われる二人。
「さっさと買って四季のところに戻ろう」
「そうしよう」
眠気覚ましに微糖の缶コーヒーを五本買っているとカツカツと靴音がどこからか聞こえてきた。
「そういえばおっさん幽霊の目撃情報があとをたたないらしい」
「この状況で怖いことを言うな」
「四季が心配だ」
「そうだな」
急いで病室に戻ろうとした二人の目の前を黒い影が横切った。衿元を冷たい手で撫でられるようにぞっとする二人。
「おぃ、何をしているんだ!」
薄暗い廊下の奥から聞こえてきたのは弓削さんの声だった。
「助かった……」
「良かった……」
ほっとため息をつく二人。でも、本当の恐怖はこれからだった。
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