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本当の恐怖
「あいつは人間じゃない。人間の面を被ったただの人殺しだ」
「ヤスお兄ちゃん……」
「譲治の大切な妹やマブダチを殺しておいてのうのうと生きている最低最悪の男だ」
ヤスさんがこわばった視線で男性を睨み付けた。ちらっと見えたのは包帯を顔にぐるぐると巻いて、杖を付いている男性だった。血走った目がギラギラと光っていた。目に見えぬ恐怖に襲われてぶるぶると震えていると、それに気付いた彼が「大丈夫。みんないるから」力強く言うと、手をぎゅっと握ってくれた。
「俺を捕まえられるものなら捕まえてみろ。警察は俺を逮捕出来ないさ。だって何一つ証拠がないんだからさ」
勝ち誇ったようにげらげらと高笑いする男性。
「証拠がないだと?警察を馬鹿にするのも大概にしろ」
蜂谷さんも鋭い目付きで男性を睨み付けた。
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