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秦誉という男

「ヤツの昔の名前は秦誉だ。噂では石山にずいぶんとまぁ可愛がられているみたいだ。石山は覃と宋のさらに上をいく変態だ。俺の弓削を好き勝手しやがって。絶対に許さない」 ヤスお兄ちゃんが握り拳を震わせた。 「もしかして石山も福島にいるのか?」 蜂谷さんが男性に聞いた。 「石山?誰だ?知らねぇな」 「知っている癖にすっとぼけるな」 「知らねぇものは知らねぇよ」 男性が持っていた杖を掲げた。 「物騒なモノを病院で振り回すなってさっき言わなかったか?もう忘れたのか?」 「うるせぇーー。これだからオッサンは嫌われるんだよ」 「失礼なヤツだな。これでもまだ二十代後半だ。お前とさほど年は変わらない」 あれは仕込杖と言って、見た目は杖だが、実際は刀だ。ヤスお兄ちゃんが教えてくれた。だからさっき青空さんが杖を物騒なモノと呼んでいたんだ。

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