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秦誉という男

屈強な男たちに取り囲まれ完全に退路を断たれた逃げ場を失った男性。サツに捕まるなら死んだほうがましだと奥歯を噛み締め自決しようとしたまさにその時、白衣を着た若い男性がカツカツとものすごい勢いで近付いてきて、ぴしゃりと頬に平手打ちを食らわせた。 「死んでもいいけど、望実さんに土下座して謝ってからにしろよ」 気色ばんで詰め寄った。 その人は弓削さんによく似ていた。 「似てて当たり前だ。彼は弓削の弟の久弥だ。レストランの厨房で働いている。昔、誉と色々あってな。因縁の相手だ」 ヤスお兄ちゃんがそっと教えてくれた。 「痛いよね?希実さんはもっともっと痛かったはずだよ。苦しかったはずだよ。あなたに人間としての尊厳を踏みにじられた僕や、無念の死をとげた希実さんの気持ちなんて一生分からないと思う」 目に涙を浮かべながら男性を睨み付けた。

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