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みんなが待ち焦がれていた新しい命の誕生
「陣痛かな。どうしよう。斉木先生を呼んできたほうがいいよね。それとも看護師さんを呼んだほうがいいかな?」
初めてのことにおろおろする彼。
「和真、まずは落ち着け。まだ産まれない」
「そうだ。飯を食べよう」
ヤスお兄ちゃんと弓削さん。それに蜂谷さんは未知さんの出産のとき弾よけを経験しているからかまったく慌てることなく落ち着いていた。
「テーブルを借りてきたぞ」
青空さんが待合室にある丸いテーブルを肩に担いで戻ってきた。
「勝手に持ってきたら怒られるぞ」
「誰もいない。すぐに返す。大丈夫だ」
「あのな青空……」
蜂谷さんが額に手をあてて深いため息をついた。
「とりあえず飯を食べよう」
久弥さんと宋さんも混ざり、和やかに談笑しながらみんなで本日二度目となる夕御飯を囲んだ。
「どうした四季?食べないのか?」
「心春と円花のことが心配で……」
箸をぎゅっと握ると、
「一太と遥香がはりきって二人の面倒をみているから大丈夫だ。オヤジはあぁ見えて元保育士だし、姐さんもままたんとぱぱたんもいる。何も連絡がないということは二人とも元気にしているということだ」
ヤスお兄ちゃんが不安な気持ちを一蹴するように優しく微笑んでくれた。
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