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産まれてきてくれてありがとう
「パパ、りんちゃんにあげて」
くまのぬいぐるみを彼に差し出した。
「いいのか?これ、心春の大事なぬいぐるみだろ?」
「うん。だってこはるちゃん、おねえちゃんだもの」
凛を一目見たくて背伸びをする心春。
「パパ、りんちゃんみえない~~だっこ~~」
「ちょっと待ってて」
彼がぬいぐるみを枕元に置くと、心春を抱き上げてくれた。
「見えるか?」
「うん、みえる」
心春は目をまんまるくして初めて会う凛をじっと見つめていた。
「りんちゃん、おかおとおててがちっちゃいね。かぁいい~~!」
「そうだね」
「はじめまして。おねえちゃんだよ。いっぱいあそぼうね」
心春の笑顔に僕も彼も、血の繋がりなんてそんなの関係ないんだ。改めてそう感じた。
凛が産まれて僕は決心した。
いまは無理でもいつか車の免許を取って、みんなでいろんなところに出掛けたい。両親の墓参りをして、彼と成長した子どもたちの姿を見てもらいたい。
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