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産まれてきてくれてありがとう
面会時間は八時までだからあと三十分くらいだ。心春は凛の側から離れようとはしなかった。
「母子同室だから、今夜は柚原とフーに警護を頼んだ。三時間毎に起きるし、何で泣いているのか分からないし、初めは母乳もなかなか出なくて、寝かし付けも一苦労だ。一睡も出来ず泣きたくなると思うんだ。柚原は子どもたちを風呂に入れて寝かし付けてからだから、九時にはここに来る。フーは素手でも闘える腕っぷしが強い。遠慮せずに声を掛けたらいい」
「何から何までありがとうございます」
頭を下げた。
「止せや、俺らは当たり前のことをしているだけだから。ここにいる間は安心して体を休めたらいい」
卯月さんの優しさが身に滲みた。そのときだった。
「パパ、四季さん」
一太くんの元気な声が聞こえてきたからドキッとした。彼も卯月さんもここにいるみんながびっくりしたと思う。
「なんでいるんだ?」
「りんちゃんに会いたかったの。だめ?」
「だめじゃないが、明日も学校だろう?」
「すぐに帰るよ。四季さん、りんちゃんだっこしてもいい」
「うん、いいよ」
「一太、落とすなよ」
「あのねパパ、僕がりんちゃんを落とすとでも思った?」
「いや、思ってない」
彼が一太くんの腕のなかに凛をそっと渡した。
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