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……十年よ
「……十年よ。結婚してなかなか子どもに恵まれなくてね。こうのとりさんは私たちのところには来てくれない。だから赤ちゃんは諦めよう。そう思っていた矢先に紬を授かることが出来たの」
結お姉ちゃんがすやすやとねんねする紬ちゃんの顔をじっと見つめた。
「会うなり彼は本当に俺の子かと聞いてきた。覚悟はしていたこととはいえ辛かったわ。千里さんが親子鑑定の結果を彼に突き付けたの。それでやっと信じてくれた。お昼を食べながらいろいろな話をしているうちに急に眠くなって。目が覚めたらいつの間にか夜になっていたからびっくりしたの。本当に馬鹿だよね。離婚届を渡すつもりでいたのに。いつまでも待っても帰って来てくれないし、連絡すら寄越してくれない。一人で紬を育てなきゃいけない私の大変さなんてこれぽっちも彼は分かってくれない。私だって泣きたいのに……だから支えてくれるお爺ちゃんとお婆ちゃんと卯月さんにはすごく感謝している」
結お姉ちゃんの話しにじっと耳を傾けるヤスお兄ちゃんと蜂谷さんと青空さん。何かに気付いたみたいだった。
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