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佐治さんの悩みの種

僕がキヨちゃんの会見の内容を知ることになるのはずっと後、退院してからだ。地竜さんが橋本もまゆこと同じ穴の狢。演技派の女狐。一切反省していない。憤慨していた。 翌朝、トイレに行こうと廊下に出たら、 「四季」 弓削さんが吹っ飛んできた。 「あっ……」 「どうも。おはよっす」 照れくさそうに頭を掻いたのは佐治さんだった。 「佐治さんが来ててくれたんですね。ありがとうございます」 ぺこっと頭を下げた。 「挨拶はいいから、間に合わなくなる」 「あ、そうだった」 トイレに行っている間弓削さんが凛をみててくれた。 「いやぁ~~めんけーなー」 弓削さんも子どもが好きだから、目が下がりっぱなしになっていた。 「ヤス兄貴とのややこが欲しい。どうしたらいいと、真面目な顔で兄貴に聞かれた時にはさすがの俺も返答に困りました」 佐治さんがはぁ~~と深いため息をついた。 「オヤジと姐さんのややこと、めんげえ姪っ子が三人もいるんだから俺はそれでいいと思うんですが……」 「ヤスお兄ちゃんと弓削さん、新婚二ヶ月目だから、ねぇ、佐治さん」 僕もどう答えていいのか分からなくなってしまった。なんで僕が照れているんだろう。 「あぁ~~思い出した!」 佐治さんが大きな声を出したから、凛がビクッとした。 「あ、すんません」 佐治さんが頭を掻きながらペコッと軽く下げた。

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