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佐治さんの悩みの種

「四季さん思い出しましたよ。すっかり忘れてました。思い出させてくれてありがとうございます。ヤス兄貴と兄貴に新婚旅行に行くように四季さんからも頼んでもらえませんか?凛ちゃんも無事に産まれたことですし。オヤジと姐さんと、和真と四季さんが新婚旅行に行ってないんだ俺たちが先に行くわけには行かないの一点張りで困ってんですよ」 ほとほと困り果ててため息しか出ない。そんな感じだった。 「やべ、兄貴に見付かった。佐治、持ち場に戻ります。四季さん失礼しました」 腰を九の字に曲げ、休憩スペースに急いで戻って行った。 「佐治の声はデカイからな。他の患者の安眠妨害になるべした。にしてもあやまったな」 弓削さんが頭を掻いた。 「四季、聞かなかったことにしてくれ。俺もヤスも新婚旅行には行くつもりはない」 「どうしてですか?」 「どうしてって……」 弓削さんが言葉に詰まった。 「遠慮しないで新婚旅行に行ってほしい。僕も未知さんもそう思っています。だって人生一度きり。明日何があるかなんて誰も分からないんです。あのとき新婚旅行に行っておけば良かった。後悔しても遅いです。お願いです弓削さん、新婚旅行に行ってください。偉そうなことを言ってごめんなさい」 頭を下げようとしたら、 「その必要はない」 肩に軽く手を置かれた。 「まさか姐さんと同じことをおめさんにも言われるとは思わなかったからたまげだ」 目が合うなり弓削さんにクスリと笑われた。

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