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弓削さんの福島弁が分かるヤスお兄ちゃんと佐治さんはすごい

休憩スペースの奥が小児病棟になっていて、主治医の伊藤先生と斉木先生の計らいで今日一日だけ病室を変えてもらった。 「産科婦人科病棟が何やら騒がしい」 買い物袋をぶら下げた佐治さんが戻ってきた。 「そうか。移動して正解だったな」 転落防止のサークルがついたベットが四つある大部屋だけど、入院しているのは僕たちだけだった。 「凛が寝ているうちに俺らも昼飯を食うべ。ラーメン、すっかり伸びっちまったべした」 何で弓削さんはこんなに訛っているんだろう?たまに何を言っているか分からなくて。ちんぷんかんぷんになる。弓削さんの言葉がわかるヤスお兄ちゃんと卯月さんと佐治さんたちはやっぱりすごいや。 「別にすごくねーぞ」 心の声がただ漏れだったみたいでどきっとしてしまった。 「一緒にいても分かんねぇときは分かんねぇぞ。だからヤス兄貴に通訳してもらうんだ。四季さん食いっせ」 佐治さんからサンドイッチを渡された。 コンコンと遠慮がちにノックの音が聞こえてきて、あんべはなじょった?と言いながら斉木先生が様子を見にきてくれた。 「何が起きた?」 斉木先生をちらっと見る弓削さん。 「そだ、おっかねぇ顔すんな。ちゃんと説明すっから。患者が病室に戻ったら知らない男がベットの上で悠然と煙草を吸っていたんだ」 「だから火災報知器が反応して何度も鳴っていたのか。人騒がせな連中だ」 「警察が捜査のため産科婦人科病棟にいっから、弓削さんと佐治さんはここから動かないほうがいい。あと、四季さんもだ」 「はい、分かりました。あの、聞いてもいいですか?」 おそるおそる切り出した。

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