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善は急げ

「オヤジ、サツがこんだけウロウロしているのに何で来たんですか?」 「何でって言われてもな」 「目立つ行動はするなって自分から言っといて破るとは」 「菱沼組の組長だとは誰も気付かなかったぞ」 「いくらなんでもそこまで節穴じゃないだろ?」 「そうか?娘を病院に連れてきた保護者にしか見えなかったのか、呼び止められることも職務質問をされることもなかったぞ。幸、隠れてないで挨拶しろ」 恥ずかしいのか顔だけひょっこりと出したのは幸ちゃんだった。頭に包帯を巻いていた。 「こんにちはー」 モジモジしながら顔を真っ赤にして挨拶する幸ちゃん。 「保育園で転んで怪我をした。念のため病院を受診してくださいって言われて、斉木に電話を掛けたんだ。予約の患者がいたのに飛び込みで悪かったな」 「救急の患者さんには柔軟に対応している。気にしっさんな。幸、バーバさんと一緒、いいなぁ~~」 「いいでしょう」 どんな事情があるかまでは分からないけど、幸ちゃんは小学生のお兄ちゃんとお姉ちゃんと三人で親元を離れ山村留学をしているみたいだった。

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