楽しい時間ほどあっという間に過ぎていく。 たもくんは一時間ほど過ごしたのち慶悟先輩と仲良く手を繋いで帰っていった。 ｢幸せオーラ全開ね。初瀬川さん、私たちも岩水くんに負けないよう幸せになりましょうね」 初瀬川さんの手を握りぶんぶんと大きく振る黒田さん。じゃなかった。武田《たけだ》小夜子《さよこ》さんだ。ずっと黒田さんって呼んでいたから、下の名前で呼ぶのがはじめてで緊張していたら、 ｢そんなに緊張しなくてもいいのに」 ぷぷっと笑われてしまった。 初瀬川さんは結婚して黒田《くろだ》咲花《はな》さんになった。 ｢今夜はお祝い御膳です。卯月さんが弁当を準備してくれたので、よかったら一緒に食べませんか？」 ｢あら、私たちもいいの？」 ｢なんだか悪いわね」 ｢悪くないですよ。お二人に久し振りに会えて妻の嬉しそうな顔を見れたので私も嬉しいんです。これからも妻と仲良くしてください」 彼が頭を下げようとしたら、 ｢和真さんにそんなことをされたら夫に怒られます」 小夜子さんに止めらた。