389 / 431
好きになったのはどっちが先ですか?
「好きになったのはどっちが先ですか?」
「どっちと聞かれてもな……」
目で吉村さんに助けを求める斎藤さん。
「会津にある大学の入学式で翼に出会い、一目で好きになった。翼は?」
「俺も同じだ」
「すぐにバレる嘘をつかないんだ。大人げない。翼は女の子にモテモテで、当時ミスキャンパスと交際していた。翼は俺のことなんてこれっぽっちも眼中になかった。大勢いる同期の中で斎藤と俺と副島は仲のいい友だち。それだけ」
吉村さんが涙を手で拭う仕草を見せた。
「だめでしょう。泣かせちゃ」
「泣かせてないよ。嘘泣きだ。ほら、よく見てごらん。全然泣いてないから」
めぐみちゃんがしゃがみこみ吉村さんの顔をそっと覗き込んだ。
吉村さんは嘘泣きじゃなく、本当に泣いていた。
「斎藤も吉村も何をしているんだが。祝いの席だ。痴話喧嘩は家に帰ってからにしてくれ」
コオお兄ちゃんがやれやれとため息をついた。
「モテ男の斎藤に片想いしていたのは吉村だけじゃないぞ」
「和真、ストップだ。それ以上は禁句」
コオお兄ちゃんか急に慌て出した。昴さんの顔色を伺いながらびくびくしていた。
ともだちにシェアしよう!