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好きになったのはどっちが先ですか?

「好きになったのはどっちが先ですか?」 「どっちと聞かれてもな……」 目で吉村さんに助けを求める斎藤さん。 「会津にある大学の入学式で翼に出会い、一目で好きになった。翼は?」 「俺も同じだ」 「すぐにバレる嘘をつかないんだ。大人げない。翼は女の子にモテモテで、当時ミスキャンパスと交際していた。翼は俺のことなんてこれっぽっちも眼中になかった。大勢いる同期の中で斎藤と俺と副島は仲のいい友だち。それだけ」 吉村さんが涙を手で拭う仕草を見せた。 「だめでしょう。泣かせちゃ」 「泣かせてないよ。嘘泣きだ。ほら、よく見てごらん。全然泣いてないから」 めぐみちゃんがしゃがみこみ吉村さんの顔をそっと覗き込んだ。 吉村さんは嘘泣きじゃなく、本当に泣いていた。 「斎藤も吉村も何をしているんだが。祝いの席だ。痴話喧嘩は家に帰ってからにしてくれ」 コオお兄ちゃんがやれやれとため息をついた。 「モテ男の斎藤に片想いしていたのは吉村だけじゃないぞ」 「和真、ストップだ。それ以上は禁句」 コオお兄ちゃんか急に慌て出した。昴さんの顔色を伺いながらびくびくしていた。

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