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罪を憎み人を憎まず
「東京から来たばかりで右も左も分からない。見た目はこんなだがカフェ巡りが趣味なんだ。いろいろと教えてほしい」
「俺には教えることなど何もありません」
「聞いていた話しでは旨いコーヒーを飲ませてくれるんだろ?違ったか?」
「そ、それは……」
玲士さんは戸惑う十矢さんにずかずかと近付くと両手を握り嬉しそうにぶんぶんと振った。
「宜しくな」
「は、はい」
「名前をフルネームで聞いてもいいか?」
「はい。朝宮……十矢です」
躊躇しながらも十矢さんは樋口櫂ではなく、今の名前を正直に答えた。
「朝宮十矢か。俺は甲崎玲士だ。玲士でいいよ。早速だが」
玲士さんが十矢さんの肩にさりげなく腕を伸ばすと、これまたさりげなく肩を組んだ。
「ちょっと付き合ってくれ」
「え?」
そのままどこかに連れて行ってしまった。
「雄士さん」
「いいよ、そのままで。十矢のことは俺に任せろ。腐りきった根性を叩き直して真人間に絶対に戻すから」
凛の寝顔を笑顔で見つめると、
「和真がまさか三人のパパになる日が来るとはな。びっくりだ」
頬を指の腹で優しく撫でると、じゃあな、そう言って十矢たちのあとを追いかけていった。
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